2024年、熊本県菊陽町に世界最大級の半導体メーカー「TSMC(台湾積体電路製造)」が工場を開設しました。
これに続く形で、第二工場の建設やサプライチェーンの再構築、関連企業の進出も進んでおり、熊本はかつてないほどの経済的な熱量を帯びています。
このTSMC効果――。
確かに経済の追い風であることは間違いありません。
しかし、その本質を正しく捉え、適切に備えることができる企業だけが、この波に乗れるのです。
■ TSMC進出がもたらす「3つの波」
TSMC進出は、熊本県内の中小企業に次のような影響を及ぼし始めています。
① 労働市場の激変
TSMC関連の高待遇求人により、人材の流出や人件費の高騰が加速しています。
製造業・物流業・サービス業においても人手不足が深刻化し、「求人を出しても全く応募がない」という声が増えています。
② 取引機会の拡大と競争激化
関連する調達・物流・施設管理・設備工事・清掃・通訳など、多様なビジネスチャンスが生まれています。
しかし、参入にはスピード・資本・信用力・ガバナンスなど、これまで以上に高度な体制が求められます。
③ 地価・物価の上昇
菊陽町を中心に土地価格の高騰が進み、建築費やオフィス賃料の上昇にも波及。
固定費が増え、資金繰りに余裕がなくなる企業も少なくありません。
■ 「攻める経営」と「守る経営」の両立がカギ
TSMC効果は追い風でもあり、暴風にもなり得ます。
だからこそ、中小企業に求められるのは、次の2つの視点です。
攻めの経営
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TSMC周辺で生まれる需要にどう応えるか
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資金調達をして新事業に参入できるか
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異業種連携や事業再構築をどう実現するか
守りの経営
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人件費や家賃の上昇をどうコントロールするか
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売上増に先行する支出に耐えられる資金繰りか
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資本力ある競合との戦い方はどうあるべきか
■ いま、中小企業こそ「数値」に向き合うとき
いずれの判断にも必要なのは、会社の今の体力を正確に把握することです。
「今月末に現預金がいくら残るか」
「借入返済のピークはいつか」
「来月の固定費支払いに耐えられるか」
それらを見える化するための基本ツールが「資金繰表」です。
TSMCが来たからといって、すべての企業が自動的に成長できるわけではありません。
むしろ、「自社の立ち位置」を明確にした企業だけが、生き残り、伸びていくのです。
■ M&Aという選択肢も現実的に
人手不足や後継者不在で、TSMC進出の恩恵を取りこぼしてしまいそうな企業もあります。
そのような中で注目されているのが、中小企業のM&A(事業承継・譲渡)です。
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後継者がいないなら、M&Aによる譲渡で会社を次世代に残す
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逆に、事業を広げるならM&Aで他社を買収し規模拡大を図る
TSMC関連で資本力やスピードが重視される今こそ、M&Aは事業存続と成長の現実的な手段となっています。
■ 吉村行政書士事務所の支援
当事務所では、熊本で中小企業の経営支援に特化し、
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資金繰表の導入と管理体制の構築
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資金調達の伴走支援
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M&A支援機関としてのマッチング・デューデリジェンス対応
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第三者承継に向けた戦略的準備の支援
をワンストップで対応しています。
■ まとめ
TSMCの進出は、間違いなく熊本に大きな変化をもたらします。
しかしその変化は、準備と戦略を持つ企業にとってのみ“チャンス”となるのです。
波が来たときに、泳ぎ出せるか――
それとも、流されるだけか――
それを決めるのは、経営者自身の判断力と、数値に向き合う姿勢です。
いまこそ、「経営の見える化」を始めてみませんか?